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海外の医療事情
赴任者が病気になったときの対策できていますか?

公開日: 更新日: 海外赴任・駐在者
海外の医療事情 赴任者が病気になったときの対策できていますか?

9月28日(木)に実施したウェビナー『弁護士&医師登壇、海外赴任者のメディカルケア 企業の安全配慮義務を満たし、従業員の心身の健康を守るためには』では「海外赴任者に対するメディカルケア」について専門家の視点で講演を行いました。
前回の「海外赴任者への安全配慮義務と法的責任」に引き続き、今回はウェビナーの内容のうち「海外赴任者の抱えるメディカルリスクと医療事情」について紹介していきます。 

海外の健康リスク

海外の健康リスク

日本職業・災害医学学会が出している情報によると、発展途上国に長期滞在している方の体調不良は、感染症を疑うような症状から要因を判別しにくい漠然とした症状、そしてメンタル不調を疑うようなものまで様々な症状がみられます。
そのため、一つの診療科ですべての悩みを解決することが難しいのが現状です。
症状が持病の悪化なのか、それとも新規疾患なのかは判断が難しく、そのうえ本人が自身の症状や持っている薬を現地の言語で説明することもままならない場合もあります。

このようなことからヘルスケアに不安を感じる日本人は多くいます。 

国による医療事情

国による医療事情

日本の医療水準は高く恵まれている

NTTレゾナント株式会社による海外生活での満足度アンケートでは、68.4%もの回答者がヘルスケアについて不安を感じていると答えています。

海外生活での満足度 出典「NTTコム リサーチ」海外生活満足度に関する調査より

その中でも言語の問題や衛生環境に関する不安を感じるという声が多いようです。

ヘルスケアへの不安の原因出典「NTTコム リサーチ」海外生活満足度に関する調査より

日本では保険適用の医療費で気軽に受診をし、医療レベルも高く衛生環境も整った状況に慣れているため、海外との違いに不安を強く感じるのだと考えられます。

海外拠点数ランキングと医療事情

海外生活のなかでもヘルスケアに関して半数以上が不安を抱えていることがわかりましたが、駐在拠点数が多い国ではそれぞれどのような課題を抱えているのかを紹介していきます。

1位 中国(海外拠点数:31,047拠点)

中国・上海市には、日本語対応可能な病院が複数あり
これらの施設は救急外来や入院設備がなく、入院を要する病状の場合には中国の公立病院へ紹介されることが多い
診療には基本的に予約が必要

初診では日本語で対応可能な病院もありますが、本格的に治療をする場合、中国語対応のみの病院に行かざるを得なくなります。
最初に受診した病院が日本語対応可能であったとしても、診療には基本的に予約が必要なため、受けたいタイミングで診察を受けられないのが実情です。

2位 アメリカ(海外拠点数:8,874拠点)

医療技術は高いが、自由診療で病院が医療費を決めるため医療費が高い
救急車が有料
予約なしで受診できる医療機関が限られている
すぐ専門診療科に回されて高額な医療費となる
すぐ退院させられる

日本と異なり自由診療であるために医療費が高額になります。 また手術後すぐに退院するのでその違いに戸惑う利用者が多いです。 

3位 タイ(海外拠点数:5,856拠点)

日本語が通じる病院もタイには複数あり 医療水準はそこそこ良い
タイの私立病院は全て自由診療のため、診察料・治療費等の医療費は高額となりがち

アジア圏では医療水準が高く、ベトナムやカンボジアの富裕層などからのメディカルツーリズムを受け入れる体制が整っています。
ただし、アメリカ同様に私立病院が自由診療のため医療費が高額になりがちです。 

注目 インド(進出拡大意欲がもっとも高い国)

ほとんど英語が通じる
感染対策が不十分な病院が多い
予定通りの診療科や医師を受診できる保証がなく事前予約が必要

進出拡大意欲が最も高い国として挙げられますが、衛生面と受診時に予定とは違う専門医が対応するなどのトラブルが課題となっています。

これらの国と比較をすると、日本では診察頻度が突出して多く、気軽に受診できる環境が整っています。年齢によっても変わりますが、平均的に月に1回以上受診をしているほどです。

一方で海外では費用面や事前予約により受診するまでのハードルが高く、日本とは異なり、受診頻度を抑えるための施策がなされています。 それらを踏まえると海外滞在者が日本にいるときと同じように病院への受診を検討することは、とても難しいことだということがわかります。

海外滞在者から医療相談があった事例紹介

海外滞在者から医療相談があった事例紹介

実際に海外滞在中に医療相談があった事例を、5つのパターンでそれぞれご紹介していきます。

パターン1 なかなか治らない事例
パターン2 メンタルヘルスの事例
パターン3 なかなか受診できない事例
パターン4 現地の治療が心配な事例
パターン5 医療費の支払いに難渋した事例

パターン1 なかなか治らない事例

事例①
アジア在住の50代男性
4か月ほど前に、陰嚢周辺の痛みや排尿時尿がでにくいなどの症状が気になり、病院泌尿器科を受診したところ慢性前立腺炎と前立腺肥大症と診断
医薬品を処方され服用しているものの改善が見られない・・・

症状が治まらないことに不安を感じたために、医療相談したという事例です。
実際は薬を処方されたことで症状が完治することは少ないですが、どのくらい様子を見ればいいのかと不安に感じていることを海外の医師へ確認することは、ハードルが高いことがわかります。

事例②
北米在住の50代女性
手に皮疹ができ、小水疱となり、全体が赤くなり繋がって痒みを伴う
市販の弱いステロイド外用を行うと軽快するが、繰り返すばかりで治らない・・・

このように自己判断では治すことが難しく、症状が続いてしまう状況も考えられます。
海外の医療アクセスの悪い環境ではなかなか思うように受診ができないことも多いのが現状です。



パターン2 メンタルヘルスの事例

事例①
アジア在住の50代男性
海外へ単身赴任したものの慣れない業務や生活からかストレスがかかり、不眠や食欲低下、集中力低下などが重なってきていた
現地病院に相談を検討したが、現地の言語でのこれら症状の説明に苦痛を感じ、受診に踏み切れない・・・

言語も文化も異なる医師に対して、通訳を通してうまく症状を伝えられるか不安になり、オンラインでの医療相談をした事例です。 メンタルヘルスの不調では、細かいニュアンスや文化による違いを、異なる言語で説明することが難しいとわかります。

事例②
香港駐在の30代男性
赴任したものの周囲に日本人がいない環境からのスタートであり、赴任1か月ほど経過したところで仕事が手につかなくなってきてしまった・・・

発展途上国への海外赴任において比較的多いと考えられる内容です。
赴任者のメンタルヘルスケアを企業としてしっかりカバーしていくことで、現地において本人の実力が発揮できない状況を防ぐことができると考えられます。



パターン3 なかなか受診できない事例

事例①
欧州駐在者のお子様
てんかんを疑う動きをすることがあり心配となり現地病院受診
可能性が否定できないということで専門医への受診を推奨されたものの予約が数か月後となるので心配

専門医への受診までの待機期間が長いことで不安になり、オンラインにて医療相談をしたという内容です。
受診までの待機期間が長くなることは、日本ではあまりないかもしれませんが、欧州ではよくあるため、その違いに不安を抱える海外滞在者も多いと考えられます。 

事例②
ニュージーランドに赴任中の50代男性
総合医に尿路感染と診断されたが抗生剤を服用しても改善せず、専門医の予約を取得したら3週間先になると言われた。それまでどうすればいいのか・・・

初診の診断結果により、他の病気の可能性や速やかな治療ができずに、長い間症状が続く可能性があったという事例です。
専門医の受診予約が先になってしまうことは海外では多いため、初診のタイミングでの診断や治療が心配な場合も、すぐに現地病院で確認することが難しいです。

事例③
アジア短期出張中の30代男性
指の怪我をしてしまったので対処法を聞きたかったが、カード付帯の緊急電話サービスに連絡したが繋がらず、現地受診時も通訳はいなかった・・・

緊急電話サービスでは、ほとんどが医師ではなくその時に対応可能な看護師が対応しているのが現状です。
そのためカード付帯保険があるとしても、具体的な対処ができないことが多いです。



パターン4 現地での治療が心配な事例

事例①
欧州在住の50代男性
仕事中に突然左目に黒い模様が見れるようになり視力低下が起きる
現地病院の眼科を受診したところ網膜裂孔と診断されレーザー治療
一方で、現地医師への不安もあり、今後帰国しての治療必要性はあるだろうか?

現地での診察・治療の結果が不安なため、オンラインにて医療相談をした事例です。結果、経過観察で問題ないということで日本への帰国コストを抑えています。
現地の診断が十分なのか不安な場合もすぐに診察してもらうことは難しいです。 気軽に相談できる先があることで不要なコストを抑えることができると考えられます。

事例②
米国在住の30代男性
甲状腺の異常を指摘され手術を勧められたが、ネットで調べてみたらかならずしも手術しなければならないようだ。本当に手術を受けていいだろうか?

相談内容から帰国して手術をすることになり、日本国内の病院を紹介したという事例です。
現地の病院では細かい相談ができない点に不安を感じ、帰国したいという人も多いと考えられます。



パターン5 医療費の支払いに難渋した事例

事例①
独自の健保組合を有する大企業
海外医療費は全て健保でカバーしていたが、現地駐在員が頻回に受診するため国内にいるよりも多額の費用がかかってしまった

事例②
社員に渡している法人カードに付帯する渡航保険で有事の医療費はカバーする予定だったが、法人カード決済で渡航費支払いをしていなかったため利用できなかった

事例③
法人カード付帯保険でカバーできると思っていたが、限度額を超える医療費がかかってしまった

海外赴任においては、人為的なミスや医療費の意図的な浪費も起こりえます。 さらに必要以上に高額な医療費が発生してしまう場合もあります。 それらを防ぐためには適切な医療であるかどうか、受診するべきかどうかを事前に相談することが重要になります。

まとめ

まとめ

様々な事例を通して、日本と海外では医療事情が異なることや、海外赴任者らがそれに不安を抱えていることがわかりました。 このような不安を払拭するために、まずは情報の収集そして海外滞在中に気軽に相談できるメディカルケアの体制を整えることです。

海外では日本からのオンライン医療診断を受けることは違法となります。
また、産業医は基本的に職場環境を管理することが業務であり、臨床の問題を対応することができません。

そのため診断の前段階であるリモート診療サービスといったオンライン医療相談ができる環境を整えておく必要があります。

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