海外研修
HISの海外研修は、経験豊富な海外研修専門スタッフが研修目的を徹底ヒアリングを行い、刺激的な海外体験目的に合わせた最適な旅先で、学びと成長を加速させます。

主体的な人材育成を実現させるためには、スタッフの知的好奇心に火をつけることが重要です。その火種となるのが、モノの背景にある「物語」です。
さて、ここで皆さんに考えていただきたいことがあります。
自社の商品やサービスができるまでの背景にある「物語」をどこまで知っていますか?
「商品やサービスの背景にある物語を知っておいた方が良い」とは認識しつつも、日々の業務に追われ、知るための行動に至っていない、そもそも知ろうとしていないスタッフが多いのではないでしょうか。
今回は、「なぜモノの背景を知ることが重要なのか」、「知ることでスタッフや企業にどのような変化をもたらすのか」をご紹介します。
商品の背景を知ることで、その商品が持つストーリーに共感を感じ、結果としてより愛着が生まれます。
例えば、普段使っている食器や家具がどのような素材を選び、どのような技術や想いを持って作られたのかを知ることで、単なる「モノ」ではなく作り手のストーリーが詰まった特別な一品として感じることができます。
商品の背景を知ることはこのように、価格では測れない商品に付加価値を与える一つの重要な要素となります。
この「付加価値」と「物語」の理解こそが、スタッフにとって競合商品との明確な差別化ポイントを認識することに繋がります。
これはサービスを提供している企業にも同じことが言え、サービスを提供するまでの想いやその背景にある企業理念などを知ることで、スタッフは自社への誇りを持ち、より深く共感できるようになります。
商品への深い理解と愛着を持つスタッフの姿勢は、お客様へと共感となって伝播します。
この感情的繋がりが商品やサービスに価値を与え、お客様に「この物語を自分の生活に取り入れたい」という強い動機付けを生み出します。
その結果、同じ価格帯あるいは価格が高い商品であっても、その本質的な価値を見出すことができるようになり、商品やサービスが溢れた価格競争からの脱却につながるのです。
・スタッフの業務の質が上がる
ただ商品やサービスを売る販売員ではなく、専門的な知識を持つことで提案の幅が広がり、業務における引き出しが増えます。その結果、スタッフは自信を持って業務にあたることができます。
・ブランド価値が上がる
スタッフ全体が価値を理解してお客様に伝えることで、そのストーリーに共感します。その結果、商品やブランドへの信頼性が上がり、お客様を長期的なファンへと成長させることができます。
・知ろうとしないからの脱却
一度、モノの背景を知ることの重要性を理解することで、自ら課題を見つけ、探求する主体的な人材に育てることができます。このような人材は、新しい変化に対しても自力で探求することができるため、企業にとって成長を支える重要な資産となります。
では、実際にどのようにスタッフたちの変化があったのか、成績優秀者の報奨旅行をかねてモロッコを訪れたアパレル製品を扱うA社様の体験記をご紹介いたします。
この企業様は参加者自らの感性を磨くことを目的とし、現地の伝統工芸である「皮なめし体験」の見学に行かれました。
その時の様子や体験後の参加者の変化をレポートします。
体験レポートに移る前に、皮なめしとはどのようなものなのかご説明します。
皮なめしとは、動物の生皮を腐敗や劣化から防ぐために、柔軟性や耐久性を持たせる加工技術のことを言います。この工程を経ることにより、「皮」から「革」となります。
なめし方には主に2種類あり「クロムなめし」と「タンニンなめし」があります。
モロッコの伝統的ななめし手法には「タンニンなめし」が使われています。植物の樹皮から抽出される渋み成分を含んだタンニンを使い、タンネリと呼ばれる工場で皮を漬けこみ自然な風で乾燥させます。
「タンニンなめし」は「クロムなめし」に比べ、時間と労力がかかりますが、独特の風合いと丈夫さを持つことが特徴です。
革製品が名産品のモロッコでは、現地のタンネリ(皮なめし工場)で、普段目にすることのない「動物の皮」から、素材としての「革」になるまでの工程を見学することができます。
この根源的なプロセスを目にすることで、自社製品の「始まり」を深く理解し、広い意味でのファッションへの理解を深め、五感から感性を磨く貴重な機会となります。
1.五感を刺激する皮の衝撃
皮なめし工場に入った瞬間、多くの参加者がまず感じたのは強烈な臭いへの衝撃でした。
その臭いを和らげるために参加者にミントが渡されたり、持っていたマスクを付けるほどです。この臭いの原因は、皮を漬ける液であり、その成分には鳩の糞も含まれています。強烈な臭いの衝撃や地面に落ちている鳥の羽や糞、タルが濁って汚いというような環境を目の当たりにし、この体験に対してネガティブな感情を抱く参加者も少なくありませんでした。
2.革への転換が驚きに変わる
この「強烈な臭い」の衝撃こそが、参加者の知的好奇心に火を付けるきっかけとなりました。皮なめしの作業は重労働であり、革を柔らかくする方法として鳩の糞に漬けるという想像を超える工程が存在します。さらに、水分を吸った皮は非常に重く、それを運ぶ作業もまた過酷です。この作業を何度か繰り返し、乾かすことで「革」が完成します。
参加者は皮なめし体験後、実際に革製品となった商品をお店に見に行きました。見学をした際には衝撃を受けた臭いでしたが、商品となった革が臭くないのか確認し、また、柔らかくなった革を触るなど、五感を使って気づきを得ようとしていました。
この一連の工程を目の当たりにすることで、「こんな工程があったのか」という驚きとともに「自分たちの製品もこの過程を経ているのか」という自社製品の背景に対する興味へと変化し、「すべての商品、このように作られているのかな」というモノづくりの背景にある物語に思いを馳せる会話が自然と生まれていました。
このような体験を経て、参加したスタッフたちの意識に変化がありました。
体験前:
「店舗で販売しているポーチや雑貨など、異国の地で手作業で作られることがあるということは知っていた」
「どこで、どのように作られているかは詳しく知らなかった」
体験後:
「モノづくりの大変さを知ることができて、お客様にも商品の良さをもっと伝えていきたい」
「業務における引き出しが増えて、今後活かせるという実感に繋がった」
「実際に目で見て、1つ1つモノづくりにはたくさんの方の労力やアイデアが詰まっていることを感じて、より一層モノを大事にしていきたい」
このように、日常業務からかけ離れた強烈な体験が「知ろうとしない」無意識の壁を根底から揺さぶり、スタッフの知的好奇心に火を付けます。
重要なのは、単に「知識を与える」ことではありません。「知りたがるきっかけ」を設計する体験を通じて、スタッフは製品の物語を頭ではなく、五感で理解します。その結果、商品を生み出す企業への誇りを胸に抱くようになります。 「知り方を学ぶ環境」を与えることは、スタッフの自主性を引き出すきっかけとなるだけではなく、スタッフのエンゲージメント向上とお客様との信頼関係を深めることにも繋がります。
そして、この自発的な学びの姿勢を身につけた主体的な人材こそが、将来的に企業の持続的な成長を支える可能性を秘めています。 企業文化として「なぜ?」を問い続け、新たな学びへとつなげる姿勢を奨励することで、この成長を支える投資価値はさらに高まります。ぜひ、貴社も「未来への投資」となる環境作りを検討してみてはいかがでしょうか。