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物価高における海外赴任者への賃金の適正化~物価水準の数値化の方法~

公開日: 更新日: 海外赴任・駐在者
物価高における海外赴任者への賃金の適正化~物価水準の数値化の方法~

海外赴任者の賃金、見直してますか?

海外赴任者の賃金、見直してますか?

新型コロナウイルスやウクライナ戦争といった情勢不安は、世界的な物価高を引き起こしました。利上げの実行により一部の国ではピークアウトを迎えたという観測もありますが、依然として物価は高い水準にあります。

物価変動の中、海外で生活する赴任者に対する賃金や手当の見直しを迫られている企業も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、海外赴任者に対する賃金と手当の在り方を解説し、物価高騰への対応策を具体的に説明します。

海外赴任者の賃金計算の考え方

海外赴任者の賃金計算の考え方出典:Interaction Institute for Social Change | Artist: Angus Maguire.
https://interactioninstitute.org/、http://madewithangus.com/

「平等=Equality」と「公平=Equity」の違いを説明した有名なイラストがあります。

平等とは同質同量な機会が与えられた状態で、公平とは同質同量な結果を保証することです。 海外赴任者に対する賃金や手当の提供は、日本国内の勤務者と公平を担保するという考えが採られます。すなわち、日本と海外との環境の違いを考慮し、賃金で差分を調整して、同じ水準で生活できることを保証することになります。

賃金計算の具体的な方法

賃金計算方法では購買力補償方式を採用することが一般的です。
これは、日本での手取り額を基準に、海外で同水準の生活が送れる程度の賃金を支給する計算方法です。
具体例として日本からアメリカへの赴任を考えます。為替レートが1ドル=150円で日本での手取り額を30万円とした場合、アメリカでも同額の2,000ドルを支給するのではなく、日米の物価の違いを考慮した上で、手取り30万円の人が日本で送る生活水準をアメリカでも再現できるよう給与を調整するということになります。

物価の数値化

物価を賃金に反映させる際に必要なことが物価の定量化です。
複数国間の物価差を数値化した指標はいくつかありますが、代表的なものを2つ挙げます。
多くの統計が1年ごとに更新されるため、1年に1回の改定が望ましいといえます。

①消費者物価指数(CPI)

複数品目の小売価格と品目別家計支出から、前年との物価の変化割合を示した指数。

同じ国・地域の前年との差(物価上昇率)を示す指標に過ぎないため、これをもって他国との絶対的な物価の比較はできません。賃金策定の初年は、実質賃金(平均賃金を物価上昇率で割った値)や後述する生計費指数などから二国間の物価差を算出し、翌年以降の改定で消費者物価指数を用いることになります。

例として以下の場合を考えます。計算の単純化のために為替レートは前年も今年も1ドル=150円で変わらないと仮定します。

前年手取り額 前年手取り額(円) CPI
日本 300,000円 300,000 100
アメリカ 2,600ドル 390,000 104

前年比で日本は物価変動がなかったのに対し、アメリカは4%上昇しています。これは、ドルの購買力が円に比べて下落したことを意味し、アメリカの赴任者に前年同様2,600ドルを支給すると、実質賃金は375,000円となり前年から減収することになります。そこで、賃金を改定し2,704ドル(=405,600円)を支給することで、日本勤務者との賃金の公平性を維持できます。

②生計費指数

都市別の家計支出から、都市別の物価差を比率で示した指数。

国連やコンサルティング会社が発表しています。消費者物価指数と異なり、都市別の物価差を示す指標であるため、日本と海外との賃金差を単純に比較できます。

例えば、東京を100とした場合にニューヨークが110であれば、ニューヨークの物価は東京より10%高いことになり、この割合を直接給与にかけ合わせることになります。東京の手取り額が30万円である場合、ニューヨークでは33万円=2,200ドル(1ドル=150円)を支給すれば公正な賃金となります。

データ元 メリット デメリット
消費者物価指数 総務省統計局、各国政府統計 無料で取得できる 都市別でない
国によって基準が若干異なる主
要国以外のデータがない場合がある
生計費指数
(国連赴任地別生計費指数)
国連、総務省統計局 無料で取得できる都市別である 主要都市以外のデータがない場合がある
生計費指数
(コンサルティング会社)
コンサルティング会社 都市別で取得できる
網羅的に取得できる
有料である

まとめ

海外赴任者に対する賃金は、日本国内勤務者との公平性の確保という観点から、購買力補償方式を採用することが一般的です。
また物価は定量的な指標で測り、ルールを明確にしておくことが重要です。
現在の物価変動幅を鑑みると、1年に1回は物価差の情報を収集し、賃金の見直しを行う必要があります。

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