出張管理システム(BTM)
すべての海外出張を一元管理し、危機管理体制の構築、経費削減、ガバナンス強化を実現します。

航空券やホテル代の高騰、歴史的な円安、そして予測不能な地政学的リスクなど、海外出張を取り巻く環境は、企業の事業活動に大きな影を落としています。
こうした状況下で、出張管理者である皆さまは、以下のような課題に直面していませんか?
「有事の際の備えを整えたいが、具体的な対応策までは手が回っていない」
「危機管理を強化したいが、コストばかり膨らむのではないかと懸念している」
「本来やるべき管理業務に十分な時間を割けていない」
これらの課題を放置すれば、企業のリスクは高まり、出張管理者の負担は増す一方です。
本コラムでは、海外出張の管理に求められる「コスト管理」と「危機管理」の2つの側面に焦点を当て、市場の動向と管理体制の変化を踏まえ、両側面を最適化するための具体的な対策をご紹介いたします。
INDEX
海外出張は、企業のグローバルな事業活動を支える上で不可欠ですが、その管理業務においては、企業が必ず対処しなければならない核となる2つの側面があります。
その2つとは、「コスト管理(事業効率の側面)」と「危機管理(安全配慮義務の側面)」です。
・コスト管理
出張費を最適化し、出張の費用対効果を最大化すること。
・危機管理
出張者の安全を確保し、テロや災害などの有事の際に企業の法的義務を果たすこと。
この2つの要素は、外部環境の変化により重要性が格段に高まっています。
次章では、この2つの側面が直面している具体的な環境の変化について話を進めていきます。
海外出張で直面するリスクはテロ、暴動、戦争・紛争、自然災害(地震、山火事)、感染症など多岐にわたります。実際、2025年で一例を挙げるだけでも、以下のように予期せぬ事態が世界中で発生しています。
皆さまの企業の出張先でも、こうした事態は常に起こり得ます。
2025年3月
ミャンマー連邦共和国でマグニチュード7.7の巨大地震が発生
2025年6月
ロサンゼルスにてトランプ米政権による不法移民摘発への抗議活動
2025年7月
タイ・カンボジアの国境紛争 再燃
2025年9月
台湾東部で超大型の台風18号が上陸
2025年9月
フィリピン・セブでマグニチュード6.9の地震が発生
このような状況下でも、「海外旅行保険に加入しているから大丈夫」とお考えの企業も多いのではないでしょうか。
しかし、多くの企業が加入している海外旅行保険がカバーするのは、主に治療費、医療搬送費、携行品の盗難・損害といった事後的な金銭補償が中心です。
テロや暴動といった生命の危機に関わる事態が起きたとき、海外旅行保険には事前の予防や有事の際の緊急対応は含まれません。そのため、出張者の命を守るためには、保険の役割は事後的な補償と理解し、「保険による事後的な補償」と「危機管理体制による予防・緊急対応」の両軸が必要です。
危機管理への対応が急務である一方で、出張手配にかかる時間とコストも増大しています。
業務渡航(出張目的)の需要はコロナ前と比較して約9割まで回復しており、日本発着の国際線定期便も、LCCの拡大などによりコロナ前を上回る便数が就航しています。
国際旅客定期便の便数の推移
出典:国土交通省|航空輸送の現状
しかし、HISのデータによると、エコノミークラスの航空券代金は2019年と比較し、アジア路線で約120~170%、長距離路線では170%以上に上昇しており、ホテル代についても高騰が続くなど、海外出張コストは高止まりしています。
この背景には、やはり円安の影響が大きく関係しており、2019年の平均為替レートが1ドル110円に対し、2024年は152円まで上昇しました。
その他にも燃油サーチャージの高騰、そして訪日外国人旅行客による需要増が複合的に関わっています。
これらの要因により、管理者は増大するコストへの対策に、より多くの時間を割かざるを得ない状況です。
燃油サーチャージ
| 2019年6月 | 2024年6月 | 2025年6月 | |
|---|---|---|---|
| 欧米 | 21,000円 | 70,000円 | 63,800円 |
| ハワイ | 12,000円 | 45,000円 | 40,800円 |
| 東南アジア | 9,000円 | 37,000円 | 40,800円 |
出典:全日本空輸(ANA)航空保険特別料金について
訪日外国人旅行者数推移
予期せぬリスクとコストの高騰という外部環境の変化を受け、従来の管理体制から、全体最適を目指す「全体コントロール」への役割変化が求められています。
多くの企業が出張手配を管理する場合、つい「安い航空券や旅行会社を探す」「出張者に相見積もりをさせる」といった方法を選択する企業がほとんどです。
一昔前は、各旅行会社が航空会社から独自に仕入れた「格安航空券」が主流だったため、旅行会社によって価格差があり、相見積もりが有効でした。
しかし、現在はオンライン予約システムの普及により、運賃は誰でも比較できるようになり、航空会社が公式に設定する「正規運賃」が主流となりました。結果として、旅行会社間の運賃価格差はほとんどなくなり、以前のような相見積もりの効果は薄れています。
そこで、管理者に求められるのは、個別の手配コストを下げることではなく、年間での渡航費を全体として可視化・分析し、出張規程を策定・実行することで、費用全体を最適化していくことです。役割は、一件一件の「手配コントロール」から、全体を統制する「全体的なコストコントロール」へと転換することが必要です。
出張者の安全確保は、労働契約法 第5条に定められた企業の安全配慮義務です。これは従業員を出張や赴任で海外に派遣する場合も対象であり、従業員の個別具体的な状況に応じて安全に配慮し、必要な措置を講じることが求められます。
この役割を全うするため、以下の4つの要素を連携させる体制が企業として不可欠です。
・危険情報の発信
即時性と正確性のある情報源を確保し、適切な情報を伝達すること。
・位置情報把握・安否確認
リアルタイムで出張者の所在を確認し、安否状況に応じて対応を変える体制。
・緊急避難・安全確保
有事の際に、迅速に安全圏へ退避させる具体的な手段を持つこと。
・運用の体系化
有事の際の行動指針や運用方法を整備し、関係者全員に周知させ、「使える状態」にしておくこと。
そして、これらの4要素は、有事の際にシームレスに連携して初めて機能します。
そのためには、出張者のリスクマネジメントという重要な役割を担い、手配内容を含む出張データを一元管理し、危機管理面も全体コントロールすることが必須となります。
ここまでの内容から、海外出張の管理には「データの一元管理と分析」「出張規程の策定・改善」「危機管理のシームレスな連携」が重要となります。
その中でも、すべての土台となるのが「データの一元管理」です。全ての出張データ(誰が、どこに、いつまでいるか)を一元的に把握できる仕組みを持つことが、企業に求められる新しい統合的な管理体制の第一歩です。
データの一元管理は、以下の効果をもたらし、出張管理の「全体コントロール」を可能にします。
・有事の際のスムーズな対応(危機管理の強化)
データが一元管理されることで、危機管理の4要素がスムーズに機能します。
有事の際、誰がどこにいるかが即座に分かるため、初動対応を迅速に行うことが可能になります。
・ガバナンス強化と無駄のない購買(コストの最適化)
データの一元化で、出張規程の遵守度をチェックしやすくなります。
データに基づき、規程の改善・実行を継続的に行うことで、無駄のない最適な出張コストの管理が可能になります。
・業務効率化と継続的な改善
申請から経費精算までを一貫した仕組みで管理することで、手配に関わる工数を削減できます。
さらに、データを分析し、継続的な改善のサイクルを回すことで、年間での渡航費用全体を最適化できます。
企業が目指すべきは、外部環境に左右されず、出張状況の全体を把握し、全体の最適化を図れる出張管理体制です。
いかがでしたでしょうか。
出張者の安全を守り、企業の安全配慮義務を果たすことは、後回しにできない重要な課題です。
危機管理強化やコストの最適化を実現するためには、企業の特性に合わせた最適な管理体制へ見直すことが大切です。
HISでは「手配先がバラバラで管理が難しい」などデータ管理にお悩みの企業様にも、最適なソリューションをご提供しております。出張管理体制に課題をお持ちの企業様は、お気軽にご相談ください。