危機管理(リスク管理)
海外出張において、土日祝の緊急対応はもちろん、情報配信から渡航データによる出張者の位置把握、トラブルサポート、安否確認まで、ニーズに合った危機管理をご提案します。
海外出張時の予期せぬ自然災害、テロ、政情不安などの有事のリスクは多様化し、複雑さを増しています。こうした状況下で、企業は出張者の安全をいかに確保するかは、出張管理者にとって重要な課題の一つです。中でも、緊急事態が発生した際に、迅速かつ正確にその所在を把握し、安否を確認できるかどうかが、危機管理体制の成否を大きく左右します。
本コラムでは、有事における出張者の位置情報と安否確認を迅速に進めることの重要性と企業に求められる体制について解説します。
従来の海外出張における出張者の所在管理は、出張申請書や航空券の発券情報に頼りがちでした。しかし、これらの情報だけでは、緊急時に必要な「詳細かつリアルタイムな情報」を得ることはできません。
従来の把握方法では、情報が限定的で静的です。分かるのは「どの都市」や「どのホテル」といった「予定」情報のみで、対象者が今どこにいるか、移動しているかといったリアルタイムな状況は不明です。これにより、詳細な位置の把握が不可能になります。
有事の際に特定の地域で危険情報が出たとしても、対象者がその都市のどのエリアにいるのか、あるいは危険区域に滞在しているかどうかが、具体的な場所までは分かりません。結果として、緊急時の判断が遅れるリスクがあります。危険情報が出た際、出張者がその危険エリアにいるのか、すでに移動したのかが分からなければ、取るべき対応が曖昧になります。迅速な安否確認や退避指示といった初動対応が遅れ、安全確保の機会を逸するリスクが生じます。
そこで重要となるのが、専用ツールなどを導入し、出張者のリアルタイムな位置をピンポイントで把握できる仕組みの整備です。これにより、次の価値が生まれます。
まず、危険情報との即時照合が可能になります。現地の危険情報と、出張者の最新位置情報をシステムが自動で照合することで、危険エリア内にいる可能性がある対象者を特定できます。そして、迅速かつ的確な初動対応が実現します。リスクが特定された対象者に対し、迷うことなく速やかに安否確認の連絡を取ったり、必要に応じて、具体的な退避指示や避難経路の案内など、次の行動に迅速に移ることが可能になります。
単に「どこにいるか」だけでなく、「その場所でどのような危険に晒されている可能性があるか」ということと、それに基づいた「次のアクション」までを考えることが、出張者の命を守る上で不可欠です。
位置情報を把握する仕組みを導入する際には、その実効性と、プライバシー保護をどのように両立させるかを検討する必要があります。貴社の運用体制、出張者の理解度、そして危機管理における優先順位を総合的に考慮し、最適な方法を選ぶことが重要です。
主な方法は以下の2つです。
緊急時に出張者自身がスマートフォンアプリなどを使って、自らの位置情報を企業に送信する方法です。
この方法は、自律性を尊重しつつ、必要な時に情報共有を促すことができるため、出張者の心理的負担を軽減したい企業に適しています。
・メリット
自らの意思で情報を送信するため、プライバシーへの配慮がなされていると感じやすく、心理的な抵抗が少ない傾向にあります。そのため、システム導入の際に理解も得やすいでしょう。
・デメリット
アプリを起動し、位置情報を送信するというアクションが必須となるため、混乱した状況下でそれができない場合には情報が得られないことがあります。また、情報が送信されるタイミングは出張者の操作に依存するため、常に最新の位置情報を把握できるわけではありません。
GPSトラッカーや専用アプリを用いて、管理者が出張者の現在地を継続的に把握する方法です。
この方法は、危機発生時の迅速な対応を最優先したい企業に適していますが、導入に際しては、出張者への十分な説明と、導入目的の明確化、そして取得した情報の厳格な管理体制の構築が必須となります。
・メリット
同意が得られれば、常に最新の位置情報を自動的に取得できるため、危機の発生を即座に察知し、迅速な初動対応に繋がります。意識していなくても位置情報が取得されるため、通信環境が安定している限り、広範囲でカバーできます。
・デメリット
出張者の位置情報をいつでも取得できる状態にあるため、プライバシー侵害に対する懸念が生じやすい点が最大の課題です。行動監視と捉えられかねないため、導入には極めて慎重な検討と、対象者からの十分な理解と同意が不可欠であり、適切なシステム選定と運用ポリシーの確立が特に重要になります。
位置情報の把握と同時に、出張者の安否を迅速かつ正確に確認することも、危機管理において不可欠なステップです。安否状況によって、管理者が次に取るべき行動は大きく異なるからです。
例えば、位置情報から出張者が危険エリアにいる可能性が判明した場合でも、本人が無事であることが確認できれば、「安全な場所への移動指示」や「今後の情報提供」などが対応の中心となります。しかし、連絡が全く取れない場合は、より緊急性の高い対応、例えば現地への連絡体制の強化や外部機関への協力要請なども視野に入れる必要が出てきます。
理想的な危機管理体制とは、危険情報の発信から位置情報の把握、そして安否確認までの一連の流れがシームレスに進められる仕組みを構築することです。
具体的には、以下のような連携が考えられます。
①危険情報の自動検知と対象者の特定
特定の地域で危険情報が発令された際に、そのエリアの出張者をシステムが自動で抽出します。
②位置情報との照合とリスクレベルの判断
対象者の位置情報をシステムが照合し、危険エリアの「どこにいるか」を瞬時に判断、リスクレベルを明確化します。
③安否確認メッセージの一斉送信
リスクレベルが高いと判断された出張者に対し、システムで安否確認メッセージを一斉送信します。
このようなシームレスな仕組みを構築することで、緊急時においても情報が分断されることなく、迅速かつ的確な対応が可能となり、安全を最大限に確保することができます。
海外出張における出張者の安全確保は、企業に課せられた安全配慮義務を果たす上で、極めて重要な責任です。有事の際は、リアルタイムな位置情報把握と、それと連動したシームレスな安否確認体制の構築が不可欠です。
出張者の位置情報の把握など、海外出張の危機管理体制に課題を感じている企業様は、お気軽にご相談ください。